マンガ・ノベルス

ここではマンガや小説系作品のプレビューを中心にお送りします。
なお、このプレビューは編者の独断と偏見に満ちていますので、
気分を害するであろう方はご遠慮下さいませ。

マンガ・火の鳥

ドラゴンクエスト・ダイの大冒険

北斗の拳・リュウ伝

スケバン刑事

男塾シリーズ

サイレントナイト翔・バトルナイト翔−KAKERU−

巻来功二スペシャル

各作品レビュー
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リングにかけろ(車田正美)

この作品は70年代後半に車田正美先生によって執筆された一大ボクシング巨編漫画である。
世界チャンプを父親に持つ高嶺菊、竜二姉弟が家の事情で上京、大都会のしがらみを耐えつつもいつしか竜二がボクサーとして頭角を現し、やがては日本ジュニアの頂点へと昇り詰め、終生のライバル剣崎と互角に渡り合うに至る。
後に彼らを含め日本ジュニアが世界ジュニア選手権に出場し世界の頂点を極めるも、伝説の武具をめぐってギリシャの実力者やら影の拳闘士の集団やらとの死闘もあり、それらを解決した後に時は流れ、ようやくプロの路へと歩み出すことになる。
そこで宿敵剣崎との死闘を繰り広げ、燃え尽きるというのが大まかなあらすじでもあるが。
これだけ見れば『あしたのジョー』『B・B』などと肩を並べるボクシング漫画だが、そこから、主人公が繰り出す必殺パンチで相手をノックアウトするというシチュエーションが当時の読者の度肝を引き、その後、世界ジュニアボクサーとの激闘にもそれら必殺技の応酬も人気に拍車がかかったことはいうまでもなく、後の『聖闘士星矢』にその要素が引き継がれたことだろう。
ともかくこの作品がジャンプの歴史のみならず日本の漫画史に燦然と輝いたことはやはり述べるまでもない。

リングにかけろ2

そして時は流れ、剣崎の忘れ形見の麟堂が一時不良に身を崩すも父の盟友たる石松の導きにより父と叔父の竜二がたどった道を歩むといった一大ボクシング巨編の続編でもある、のだが。
さすがに前作のような盛り上がりにはどこかかけているきらいもあり、それぞれ主人公の仲間たちの息子たちもそれなり強いがどこか父親の影を引きずっているきらいがあった。ことに河井の甥は生来の体の弱さもあり、話の途中で力尽きてしまった。またかつてのライバルたちの息子や後継者も先代に比べればどこか頼りなさげな印象を禁じ得ない。というか河井やドイツのスコルピオンなども昔の情熱を一時衰えてしまったきらいさえある。これは作者の車田先生としてもマンガに対する情熱が昔と比べて衰えたことと、その当時のリバイバルブームに先生自身も疑問を持ちながらの制作であったことも大きな影響をもたらしたことだろう。
それでも最後、実は双子の兄弟だった竜堂とプロボクサーとして雌雄を決して物語の幕を閉じる。これも先生なりの幕の閉じ方とも考えられるけれど。


ファミ通のアレ(仮題)(竹熊健太郎・羽生生純)

90年代にファミ通で人気を博した『しあわせのかたち』の桜玉吉先生に触発されてか、当時新人の羽生生センセイと組んで描いた作品である。うだつの上がらない貧乏博士という設定の竹熊氏が自作のポンコツアンドロイドの純子とともに担当の国領氏との掛け合いコントを繰り広げながらもゲームマンガみたいな作品を中心に面白おかしい人間ドラマがメインのストーリーとなっている。。
ちなみにタイトルは初回からなかなか決まらず、結局ファミ通のアレといえばこの作品といった存在を目指したたしかにいい加減な設定で設定された。
作品内容もゲームマンガを描こうとするいきさつをストーリー化したものや同誌の他作品の勝手なパロディやらファミ通等業界の当時のレポートみたいなものや、当時人気のRPGの世界のベースとなった中世ヨーロッパのトンデモ歴史の裏側等のウンチク話やらと結構バラエティに富んでいた。あと水死体となった桃太郎一行がガンジス川をただ流れゆくだけの桃太郎inガンジスもある程度シュールな作品もある意味引かれるものがあった。
結局は軽い冒険話に転んだかと思いきや完全に楽屋落ち話でシメてしまったけれど、全体を通じてやはり面白いといえるかもしれない。そしてその作品を機に羽生生センセイも異色の漫画家として第一線で活躍しているともここに記載したい。 


熱笑!花沢高校(どおくまんプロ)

この作品は『花の応援団』『暴力大将』をはじめとするコミカルでバイオレンス風な作風で勇名をはせたどおくまんプロ制作の学園コメディとして当初は描かれた。
図体はでかいがうだつの上がらぬ主人公力勝男が男を上げるべく学園内でのし上がるべくケンカに明け暮れる日々から、やがて学園界隈を隠れ蓑にした犯罪組織との抗争に巻き込まれる形となる。
一旦は組織に制圧されるもかつて学園間の抗争を戦い抜いた戦友たちの協力を得て。やがては一大学生組織を集結し、犯罪組織との全面戦争を繰り広げ最後には勝利を収める。そして一連の争乱の責を負う形で罪に服し、最後には男の花道を降りていく。
つまり当初のコメディから今風の表現でガチのバイオレンスアクションへと移行したのだ。
その醍醐味はいわゆる素手ゴロのケンカアクションを起点として、何と言っても当時の、今でいうバイカーブームを受けて、バイクでのアクションからあたかも戦国の合戦よろしく敵も味方も迫力ある戦闘シーンを繰り広げてくれたことだろう。たしかに基本はいわゆる番長ものなのであまり高評価しすぎることもないだろうけれど。
ともかくもこの花沢高校。同時期のスケバン刑事と同じく一大ムーブメントを繰り広げ、後の番長ものマンガにも多大なる影響を見せてくれたことだろう。


ブラックジャック(手塚治虫)
 言わずと知れた手塚先生の名作で、最近テレビアニメ化したということでかつて連載した少年チャンピオンを始めとする秋田書店では大々的なキャンペーンを行った。
特に
山本賢二氏の漫画はまあ原点回帰を強調したかったのだろうか、BJが結構腹黒く描かれている。これは山賢さんの偽悪的な性格によるものが多いものだろうが、僕としてはちょっと引く。

 かつて宮崎駿カントクが評したと思うが、確かに手塚先生の漫画はある意味人間の死を兇器にしている感があり、特にBJではそれが露骨に表れているように僕も思える。「どうしてこんな所で」という具合に。まあついでに言ってしまえば、やはり手塚マンガらしくファンタジーの要素もやはりちらほらと見受けられる。
 それから今にして思えば、裏世界の医者といった設定も、当時の社会情勢に対する手塚先生のアンチテーゼではないかと思ったりもする。
 それでもBJは後に続く医療マンガの先駆けとなったのは言うまでもない。
 まあそのような当作品だが最近のアニメ版は長男の眞氏が監督を手掛けたことは都度に有名で、当時の作品を現代の医療技術に照らし合わせた作風にと制作され、あと先に問題となったキャラクターの生死に関して意見を加えたことも挙げたい。
 それに際して僭越ながら、アニメ化されなかったエピソードを編者なりに予想はしてみたものだけれども。。

七都市物語(田中芳樹)

 『銀河英雄伝説』『アルスラーン戦記』等と並ぶ近未来を舞台にした戦記物ノベルス。
この作品を語る上での最大のキーワードは「はかばかしい」ということに尽きるだろう。もちろん、田中芳樹先生の作品を考えて良作であるのは間違いないけれども。
 まずははかばかしい世界観から、はじめ突然地球の軸が回転する「大転倒」という異変により、地球全土が甚大な被害を受け、生き残った人々が復興に携わる中、月の住民は防空システムで地球の住民の封じ込めるも、その月の住民は謎の疫病で全滅。かくて残された人々によって、各都市国家ごとに覇権を競っていく。
 そもそもが近未来を舞台にした戦記ものというけれど、ここまで世界観が徹底していれば、はかばかしいと形容もしたくなる、だろう。
それに伴い、人々のばかはがしさがある。各都市国家が戦争を繰り返しているというのは先ほど述べたけれど、関わる人々の心情がまさに欲望むき出しというばかはがしさである。それを象徴しているのが、兵士を戦場に送り続けている中での政府高官らが宴会にうつつを抜かしていることやら、ある開戦のいきさつからの「はかばかしくない開戦理由など存在しない」というくだりやら、これはすなわち開戦はすべてはかばかしい理由からくるものだということだ。
 結局本編は一都市の事実上の脱落でひとまずの終了となったけれど、やはり作者の田中先生が書かなくなったことがやはり痛い。
 そういえば他の作家さんでの関連作品もみんな外伝扱いだし、またOVAでは世界観設定の一つのオリンポスシステムの秘密が伺えるくだりがあったけれど。
 ともかく編者としてもある程度、このはかばかしい世界の帰結をつけてほしいと思うのだが。


ヒストリエ(岩明均)

 古代マケドニア、アレキサンダー大王に仕えた武将エウメネスの半生を描いた歴史作品。
かつては寄生獣で読者の度肝を抜きその後も重厚なストーリーを繰り広げた岩明氏の意欲作でもある。
 流浪の民の一子としと生を受け、古代都市カルディアの名家に引き取られて幼少期を送るも、家の没落とともに奴隷として売られ、様々な苦難や流浪の末にマケドニア王フィリッボスに召し抱えられる。といった大まかなストーリーで。
 当作は古代ギリシャ、ヘレニズム時代が舞台だが、登場するキャラは今時の若者のセリフ回しに近く、ある程度のライトな作風にもなっている。