各作品レビュー:サ行


THE MOMOTAROU(にわのまこと)

THE MOMOTAROUは80年代半ばにプロレスを媒体としてはじめギャグマンガとして、中盤辺りには本格的格闘漫画として人気を博した作品である。
ストーリーは昔なじみのおとぎ話のヒーローである桃太郎の子孫でもある覆面レスラーの“モモタロウ”をはじめライバルである“キンタロウ”や桃太郎の宿敵である“オニガシマブラザーズ”らレスラーの対戦をトントン拍子で切り抜けていくといった流れでもあった。
そんなモモタロウだが、かつて恨みを持った裏武道家や、最強トーナメントに巣食い、強者たちの力を奪い続け生き永らえていた最強の鬼やらと、まさに死闘の様相を次第にていしていくことになる。
そんな激闘を経てまた平穏な日々を送ろうとストーリーもギャグ路線に戻って時を過ごそうとしていたのだが、やはりモモタロウの先祖の出生の秘密にも関わる未来から神を名乗る強者との決戦をへてひとまず連載を終了させる。
その後にわの先生はスポーツ漫画や、作中の女の子キャラクターのセクシーさから、セクシー路線のマンガにも手をかけ、2000年代で実際の格闘技ブームからひとまずモモタロウも続編が製作された。それらを踏まえて現在は90年代に手掛けた格闘技漫画の続編に手掛けているとか。そういえばモモタロウも一時期ポストキン肉マンを目指していたと見られたがもう少し盛り上がりに欠けていたきらいがあったのが惜しむべきところだったか。  


 サラリーマン金太郎(本宮ひろ志)

天地を喰らうや男樹、俺の空で有名な本宮ひろ志先生が描いた、一大サラリーマン叙事詩ともいえる作品である。
ひょんなことから大手の大企業に就職していくことになった主人公、矢島金太郎が様々な事件を乗り越えて成長していく。これは本宮先生お得意のいわゆる番長もの、任侠ものをベースに、会社企業にての番長ものから描き始めたのだろうか。
たしかに当初は今までのようにケンカに明け暮れてばかりだったのだが、やがて様々な人との付き合いを経て本格的な仕事に打ち込んでいき、ついには自分の地位を確立していくも、一企業人にはとどまらず、これまた本宮先生お得意の山あり谷ありの展開で様々な問題をも乗り越え、己の道を進んでいくのだった。
いずれにしても本宮先生ならではの極端な描写もあったけれども、日本のサラリーマン、ひいては企業人、社会人、として男としてのあるべき姿を描いた作品ともいえるのではないか。 


3年奇面組・ハイスクール奇面組(新沢基栄) 

3年奇面組から始まる奇面組シリーズは80年初頭から後半までのいわゆる80年代ジャンプ全盛期の一翼を担った学園ギャグ漫画である。
舞台は一応中学、高校というとある学園において、少しヘンな顔と破天荒な行動力で学園内を一大パフォーマンスの場として盛り上げようとする学園グループ奇面組が、これまた個性的な他クラスのグループとしのぎを削ったり、学園内のクラブやイベントに顔を突っ込んだりと楽しいギャグストーリーを展開する作品である。
さらにストーリーも学園内にとどまらず、刑事ものやらファンタジーやら地球防衛軍やらヒーローものやらと番外編的な活躍も見逃せない。
主なキャラクターとして主役の奇面組はもちろんヒロインの河川唯を中心に、奇面組と張り合うグループも幅を利かせるも、当時登場人物が増えすぎたので高校編でいくらか削減の憂き目になったとか。その代わりに奇面組のクラスのクラスメイトのキャラクターをはじめ、中には一発芸的なキャラもいたが、奇面組を喰うような脇役キャラも幅を利かせたりもしていた。
その後のストーリー展開として中学編の『3年』と高校生編『ハイスクール』とひとまず安定した連載を見せてくれたのだが。やはり作者の新沢先生の気力が衰えたのか連載終了時にはヒロイン唯の夢オチ的な結末となり、それが賛否両論を起こしたのは今でも記憶に残っている。
その後新沢先生もいろいろと連載の場を得たのだが、やはり体力的に限界がきて途中連載停止の形で終了し、その後のリバイバルで奇面組も復活したがやはりいろいろなトラブルに巻き込まれやはりリタイアしてしまった。
それでもこの奇面組、今でも愛される名作の一つであることには変わりはない。


史記(横山光輝)

ビッグコミック・スペリオールにて連載された『三国志』『項羽と劉邦』『殷周伝説』に続く古代史を描いた作品、であるのだが、やはり最晩年の作品であるのか流石に全編を書き上げるのには無理があってか要所を押さえた作品構成となっている。
 まあ描かれた時代は周代の春秋、戦国時代、秦の始皇帝の時代、項羽・劉邦の対決、そして前漢・武帝までの時代、あとある程度の人物列伝といった内容であった。
とはいえ横山先生がもう少し元気であったならば、まず伝説の三皇五帝の時代から夏王朝のおおまかな説話、周王朝の幽王の寵姫・襃似の逸話やら、蘇秦・張儀の権謀術数合戦やらと、まあ発表されずじまいになったエピソードが少なくないだけにやはりおしい気がする。もしもこの作品がアニメ化することになれば光プロさんのお力で先述の原作の補完をしてほしいのが心情なのだが。


ジャングルの王者ターちゃん(徳弘正也)

この作品は徳弘正也先生が世に送り出した痛快ギャグアクション漫画である。
もともとが映画の『ターザン』をモチーフにしたパロディギャグで前半は徳弘先生お得意のお下品なギャグ満載のお笑いで勝負するはずだった。ところが元が元なのか、平成初期の時流に乗ったのか、次第にバトルアニメの要素も取り入れることとなり、原住民のライバルやら押しかけ弟子などの仲間とともに世界各地の武道会を転戦することをはじめ、裏格闘技組織やら生体兵器を駆使する犯罪組織やらとの激闘も描かれた。
それが一段落してからまた従来のギャグマンガや人情もので勝負せんとするが、それでもひとまずの連載終了にこぎつけようということで、未来の存亡をかけて訪れた未来からの使者との対峙とともに、その未来をより良きものにしようといったところでお話をシメたのだった。
そういえばこのターちゃんもやはりアニメ化されある程度の下ネタ要素を抑えつつ、それでいてジャンプの時流にうまく乗れたのかそこそこの人気を博した。

しかし昨今では前半のお下品な下ネタ部分もさりげなく規制されちゃったりするがこれも致し方ないかもしれない。
ともあれこのターちゃん。先の80年代から続くジャンプのギャグとしてその名も知れ渡ったことだろうけれど。


すすめパイレーツ(江口寿史)

この作品は70年後半に少年ジャンプにて連載されたプロ野球を舞台としたギャグマンガであった。
とある豪農が自らの財力で設立したプロ野球チームの千葉パイレーツ。立ち上げたまではいいけれど、いざプレーしてみれば実力はからっきしで、むしろ対戦チームをけむに巻いて翻弄し、それなりの騒動も引き起こすありさまだった。その中にはかつての巨人の名選手たる王や長嶋をはじめ、星野、田淵、広岡(いずれも敬称略)の各チームの名選手、監督も実名で掲載されたのは今でも驚嘆に値する。当時これに匹敵するのはいしいひさいち先生の『がんばれタブチくん』だろう。
そういえば作者の江口先生も千葉県に在住したことがチームに関連したことだろう。その千葉県も80年代になってディズニーリゾートが展開され、2000年代前後にはロッテマリーンズが千葉に本拠を移したことも時代を感じられずにはいられない。
さておきそんなパイレーツに、新人として一平が入団し、ギャグ集団として悪名を馳せる時折犬井たちメンバーに翻弄されるものの、チーム内で真剣にプレーを行っていく。これは『巨人の星』を意識してそのパロディながらも名ドラマを期待されていた。そんな一平もライバルキャラも登場したが半ばギャグキャラとなりつつも一平との好勝負も幾度か繰り広げられた。
それから極道張りの抗争やら後の美少女ブームのけん引役となる女の子キャラの活躍やら、あげくSFのパロディ等なんでもありの展開で好評のうちに連載を終了させた。
後に細々と連載等の作品を製作したが、やはり徐々にイラストレーターの仕事に移行して現在に至るのだった。