北斗の拳・リュウ伝

80年代初頭、ジャンプより連載された“北斗の拳”
世紀末の暴力が支配する荒廃した世界で一子相伝の暗殺拳“北斗神拳”を駆使して闘う主人公ケンシロウの活躍を描いた
バイオレンスな描写と男の哀愁を醸し出しながらも痛快なアクション巨編として絶大な人気を博した。
同年代後半にて連載が終了してもなおその人気は衰えることはなく、様々な派生作品も世に出たことだろう。
そこで当HPは手前勝手を承知の上で最後期にケンシロウの継承者として選ばれたラオウの子リュウを主人公に、
ある程度の平和の中、再び世を乱さんとする者たちに敢然と立ち向かう様をここにお送りできればと思います。
なお述べるまでもないのですが、原作の北斗の拳及び各派生作品とは一応は関係ないことをここに述べることに致します。
以上のことをご了承の上、それでは、ごゆっくり。

プロローグ

前世紀末からの戦乱より世界は暴力が支配する混迷の中にあった。
その混迷を収めんと男たちは闘い、伝説となった。
そしてここにまた一人、新たな伝説を築かんとする男がいた。

とある荒野、一台のバギーが数台のバイクに追い回されていた。やがてバギーは岩盤に乗り上げ身動きが取れなくなる。
バギーから転げ落ちた男にバイクの男たち、いずれも若い不良風の男たちが囲んでいく。
「どうしてこんなことをする」と抗議する男にコツコツ働くなんてバカらしいと返し、バギーの物資をよこせと迫る。
それを拒否し不良たちに踏みつけられる男、バギーの物陰で怯える男の妻子、しかし一人の不良が何かに吹き飛ばされる。何者かと誰何する不良たち、そこには巨漢の青年が立っていた。
激昂して襲いかかる不良たちを拳一つで打ち払う。打たれた不良たちはいっせいに身体の異変を訴える。
その強大な容姿と力業にラオウの名を口にする不良たちに「俺はラオウではない」と返しつつ、
「悪党というより、単なる跳ねっ返りのチンピラか、本気を出すまでもないが、せめてこの人の痛みを思い知れ」と、掌からの闘気で不良たちを吹き飛ばす。
その闘いぶりに何かを得心する男、そこに妻が駆け寄って「命ばかりは!」と若者に懇願するが、男がそれを制する。
「いや、俺もあいつらと同じだ」
妻をなだめつつ返す若者に男は訪ねる。
「しかしあの業を使えるのは、拳王さまお一人のはず。よもやあなたは」
「まさかあんたは、いや、俺は、ラオウの子、リュウだ」
と名乗りつつ、リュウと名乗った若者は乗り上げたバギーを片手で元に戻す。
「俺ができるのはこんなところだ、その先に村がある。もう一息だ」
そして寄ってきた子供に手を添えて、
「お前も男なら、どこまでも強くなれ。親御さんたちを守れるようにな」
と若者リュウは去っていく。リュウが去り行く様に、過去の思いがよぎる。
ケンシロウとラオウとの決戦近き頃、拳王軍の一団と対峙しそれを討ち破った際、数人の若者の怯えを感じたケンシロウはそのまま手を出さずに去っていく「拳王は俺が倒す、そしてお前たちは、生きろ」という言葉を残して。
その想いとともに元拳王軍の兵士だった男は帽子を脱いでリュウを見送るのだった。

同じ頃、フードを目深にかぶった女性を数人の荒くれ者が追い立てる。誰何する男たちに食べ物を所望する女性。近付こうとする男たちにその女性はいきなり手を広げんとするや、男たちの服が斬り裂かれ、その際に数筋の傷が刻まれる。
「まさかこの拳!?」と誰何せんとするも、恐れをなして逃げ出してしまう。その際に落とされた食糧を少女は拾いつつ、指先にこびりついた血を見てつぶやく。
「血か、これを見たら母さんが悲しむな」と、食料を口にしつつ再び歩みだすのだった。

第1話:水鳥の少女

水鳥の村
かつてケンシロウとレイが守りきったこの村は、今や緑豊かな、実りある地となっていた。
村の中心とある石碑、かつて南斗水鳥拳のレイ終焉の地に建てられたそれの前に、村長となったマミヤとレイの妹アイリが祈りを捧げていた。
「兄さん、あの娘はとうしているかしら」
「大丈夫、あの娘は強い子だから。無事彼のもとにたどり着ければいいけど」
「そうね、兄さん、あの子を、見守って」
空を見上げるマミヤとアイリ、空には一羽の小鳥が飛んでいた。

変わって荒野を歩む一人の男リュウ、先の事件から数日後、飲まず食わずで歩き続け、流石に疲労の色をあらわになった。
「水、いやその前に、食糧(メシ)を・・・・・」
それでも自らに奮起を促しつつ、歩みを進めるリュウは、そのうちにオアシスを見つける。
まずは渇きを潤せると急ぎ足でオアシスに入る。しかしそこには水浴びをしていた一人の少女がいた。
軽い動揺を覚えるリュウに少女はおもむろに空を引っ掻く。リュウの胸板に数筋の傷が付く。
「これは、南斗水鳥拳か・・・・・」
動じないリュウに今度は少女の方が動揺する。やがて両手を水面に置き、空高く飛び上がる。リュウは太陽を背に空を舞う少女の姿を見やる。
「巣立ったばかりの雛鳥か、俺と同じだな」
そしてリュウめがけて少女の両手が降りかかり、リュウは両手で受け止める。
「水鳥拳奥義、飛翔白麗か、思わず受けてしまったな。これが男のけじめなら自惚れかもしれない。まして拳士のけじめとなれば」
受け止められた少女の顔にも安堵の色が浮かんでいた。
「あんた、ラオウの子供のリュウでしょ」
「そうだ」
リュウの方も自らを見知られたことにむしろ安堵する。互いの手を放し、リュウは改めて告げる。
「できれば話をつけたいが、まずは服を着てくれないか」
「・・・うん」
少女の方も自分の姿に気付き泉脇の草むらに身を隠す。
ややあって服を来た少女とリュウが改めて泉外に座す。まず少女が名乗り上げる。
「あたしはユイ。南斗水鳥拳レイの妹アイリの娘だよ」
「やはり、そうか」
少女の名を知ることができたリュウ、少女ユイもリュウの心情を汲んでか、なお話を続ける。
「たしかに伯父貴はラオウに倒されたけど、その後最期の命を燃やして母さんとマミヤさんを守りきった。そのことは今でも誇りに思ってる」
「・・・・・」
ユイの言葉に陰りはなかった。
「そのラオウだって、野望の果てに最後ケンと己の誇りを持って闘い抜いた。それから今、あの二人の誇りと志はあんたがついているはずだよ」
「そう、ありたいものだな」
いくらかリュウの心は解きほぐされた。
「おそらく伯父貴以上の水鳥拳の使い手は現れないかもしれない。あたしは伯父貴の義の星とともに後の世に水鳥拳を伝えられればいいと思ってる」
「やっぱり俺と同じ、そっちの方がきっぱりしているな」
「そうかな、だったらあたし、あんたについていくよ。伯父貴だってそれを望んでるはずさ」
「そうか、すまない」
立ち上がり呼び掛けとともに手を差し伸べるユイにリュウもそのまま手を取り立ち上がる。ここに旅の仲間ができた。