スケバン刑事(デカ)
(和田慎二)

概要

原作について
『スケバン刑事』とは、70年代後半に連載された、少女漫画ながら少年漫画でも通用するノリで多くの支持を集めた学園アクションマンガでもある。
物語はとある事件で少年院に投獄された麻宮サキは、母の減刑と引き換えに、一種の閉鎖社会でもある学園社会に蠢く犯罪に立ち向かう学生刑事として 数多くの事件に立ち向かう。といったのが当初のあらすじだった。
後に悪しき野心を持つ宿敵、海鎚麗巳と対峙し、一旦は検挙するが、後に脱獄しての逆襲を受け多くの仲間を失いつつ相打ちという形で決着を見た。
ここで連載は一旦は終了されたが、ファンの惜しむ声を受けて連載再開にこぎつけられた。

麗巳との激闘の後にとある日系の財閥に助け出され、復活を遂げてから、さらに強大な敵との対決に余儀なくされる。
学生連合の抗争、それに蠢く犯罪組織、そして総ての黒幕の謎の老人と闘い抜いていき、サキは風のように去っていくのだった。

そんな当作品なのだが、まあ学園ものをはるかに超えたバイオレンス度を擁する作品でもある。まず敵味方の使い捨てとも思われる損傷度が大きく、それにともなって、前述の麗巳やらその盟友の鳴海碧子やらと、確かに悪の美学に対する憧憬は認めるところだけれど、やはりそのやり方はぶっちゃけ言えば「ケツの穴が小さい」ともいえるだろうか。
ともかくも、和田せんせいもそれにかすかに後悔していたのか、後年リメイク作品を制作したことは記憶に新しい。
そしてもう一人挙げるならば、すべての事件の黒幕たる信楽老。何らかの手段で永遠に近い時を生き、日本の裏面を支配していったが、裏腹に老いていく自分と相対させ次第に若者を、ことに若い女性を憎むようになる。やはり彼自身も悪役としてはどこか人間的な部分を捨て切れなかったということか。
 テレビドラマ版等について
こうして絶大なる人気を博したこの当作も85年頃になんと斉藤由貴主演でテレビドラマとして放映することとなった。
ストーリーは前半は各地の学園犯罪の捜査を中心に、後半から原作前期に準拠した展開となった。

そんな第一部の好評を受けて今でも名作の名が高いだろう南野陽子主演の第二部『少女鉄仮面伝説』が放映された。
ここでのストーリーは原作後半をベースに、“麻宮サキ”の名を受け継いだ主人公、幼い頃何らかの陰謀に巻き込まれ鉄仮面をかぶせられ、現在に至ったといったという、
今でこそ無茶ともいえるのだが、ともかくその主人公が、はじめ知り合った仲間とともに学園組織の暗躍とその背後の謎の老人、そして仮面をめぐっての自らの因縁とにケリをつけるというのがおおまかなあらすじなのだが。
ちなみにその鉄仮面については、やはり原作にてサキのパートナーたるエージェントの神恭一郎が、若い頃敵組織の陰謀によって鉄仮面をかぶせられたエピソードによるものだった。
そしてその次作浅香唯主演の『少女忍法帳伝奇』これは原作後半のサキの味方になった伊賀の里の学園組織と、里を追放された敵組織の長が復讐のために攻め込んだエピソードを引用したもので、やはり三代目サキを襲名した主人公が、同じく一門の姉妹とともに学園犯罪の裏に蠢く敵流派との抗争が主なストーリーとなっている。
これについてはまったくというわけではないけれど、ひとまずオリジナルといってもいいかもしれない。

ともかくもこのテレビドラマもひとまず原作とは別物というよりはもう一つの作品と見て楽しむ方がいいとは思うのだが。

ちなみに90年代のOVA、これは純粋に原作そのもののストーリー展開で、初期の海槌一族との対決だけだったが、原作のファンもある程度一安心だったようだ。

令和のスケバン刑事
昭和の学園アクション漫画として一世を風靡したこのスケバン刑事だが、なんと令和の今になって何本かのタイトルがリリースされる運びとなった。
まずは『Reスケバン刑事』これは原作を令和でも通用できるように再設定したものであり、いわゆるリブートということでそんなにヤマは変わっていないともいえるけれど。
続いて『時をかけるスケバン刑事』これは原作のスケバン刑事、麻宮サキに代わる正義の執行者ということで令和の現代から昭和の時代へとタイムスリップしてサキに成り代わって悪を成敗するという、いわゆる異世界転生ものともいえるかもしれない。
そして『スケバン刑事Pretend』これも令和の女子高生がかのヨーヨーを手にして学園に巣食う悪を成敗するといった。ある意味魔法少女スタイルで描かれた物語でもある。
このように原作をベースにしてどこか世界観が通じるストーリーが描かれたということはこのスケバン刑事も今でも支持されているともいえるだろう。

もっとも編者としても純粋な原作の続編を後述に描いたけれど。

予想ストーリー・ネクストジェネレーション

前編
かつて日本の学園社会を通じて日本を支配せんとした犯罪組織とそれを裏で操った老人との戦いがあり、それはささやかな伝説として人々の記憶に残っていった。

あの戦いから数年後、アメリカ、デンバーの山奥で一人の男が暮らしていた、その男渡辺大吾は後述の財閥のエージェントとして時折働くも、いつもは半ば悠々自適の生活を送っていた。そんな彼が一人の赤ん坊を拾う、その子に運命的な何かを感じ“サキ”と名付け大切に育てることにした。
同じ頃NYのスラムにて、不良たちがたむろしているのを警官が誰何する。先日流れ星が落ちてきて、近くにヨーヨーが落ちていた。それを拾って遊んでいたが、硬くて重いそれを誰もがもて余していた。そのうちヨーヨーの側面が開きそこには警視庁の記章が印されていた。そこにとある財閥の使いの者が現れ、口止め料とともにヨーヨーを回収する。その財閥こそ、かつてNYの怪物と称されたとある日系の財閥を吸収した若き頭首率いる新進気鋭の財閥だった。
その財閥の当主ジミー=オッドマンは全米での放浪と修行を切り上げて程なく、重病のゴルド・小松崎に呼び出され、もしもジミーが父を継ぎ財閥の当主となるなら自分の財閥を合併してもよいと持ち掛ける。ジミーもそれに応え、ゴルドの死後一大財閥を率いるに至ったのだ。

その一方で、名僧樹真のもと一人の雲水が修行を終えて旅立たんとしていた。自分は一度死んだ身と言いつつ新たなる生と使命を自らに課す。その肩には一羽の小鳥が停まり、傍らには白い蛇と黒い猫が寄り添っていた
「人の道に獣の道、そして蛇の道、さらには悪の道もまた然り。しかしそれらを踏み外して外道と成す。くれぐれも外道に陥ってはならぬか」
とつぶやきつつ街を歩きほどなくして一人の青年に呼び止められ、これも縁かということで酒の席に付き合うのだった。

それから程なくして、とある隔離地区に謎の一団が現れて、彼らの目の前に一体のミイラ、否、痩せこけた老人が姿を現す。そこに駆けつけた公安が誰何するや、何故かその老人がなぎ倒す。手刀で心臓をえぐってその血をすすり「傷は癒えた」と言い放つ。そして一団に連れられて去っていく。
同じ頃NYでは件の財閥が「魔界から蘇りし者」の報を伝えられ、すぐさまデンバーに連絡をつけるよう指示する。その連絡元の公安当局、額に月のアザを持つ捜査局長はふと机上の写真に目をやる。あの戦いはまだ終わっていなかったとつぶやきつつ。

それから十数年後、日本を訪れた大吾とサキは、街中でたむろしている学生たちを見かけ、それが鷹の羽学園の生徒であることを知るやいろいろと何やら話しかける。そのうちに青年教師が現れ、生徒たちに誰何しようとするも、大吾を見かけるや叔父貴と呼び生徒たちを咎める。その教師は大吾の甥でかつての鬼教師沼十蔵の息子の不良教師沼剣蔵だったのだ。ひとまず大吾が取り繕い、生徒の一人にかつての友人片岡の面影を覚え、あらためて呼び掛ける。彼はその片岡の甥で山田といったのだ。
生徒たちを返した後、剣蔵は大吾とサキを家に招き入れ、大吾の姉礼子も前もってオッドマン財閥からの連絡を受けたこともあり、懐かしげにサキを迎え入れる。
後日姉の言いつけで十蔵の墓参りに付き合った大吾とサキ。悪態をつきつつ十蔵を参る大吾にここぞとばかりに相槌を打つ剣蔵。そこにあの山田が母親とともに墓参りに来ていた。
その母親は通りすがりながらも兄の葬式に来た女生徒の面影に似ていると告げるも、大吾がその遠縁の娘だと返す。そのうち話に花が咲き、大吾のおごりでかの財閥傘下の高級レストランでの食事に付き合うことに。この席で剣蔵が大吾だけに、山田の伯父片岡の死の原因たる学生組織の残党が復活したことをとある雲水に告げられたことを伝えるも、実は大吾もそれを承知で、今回の来日もそれに関してのことだったのだ。
やがて少し年季が入った一軒家をサキの新たな住まいとし、そこの管理人でもある一人の女性の世話を受けて、サキの新たな生活が始まる。
その一方で大吾はあの公安の一室にてあの局長と、現在鷹の羽学園の学園長を務めている女教師、そしてオッドマン財閥当主ジミーの立会いの下、先に剣蔵に伝えられた案件について語られ、それに伴いとある品を渡される。それはかつてNYで落とされたあのヨーヨーだったのだ。

中編
後日のある朝、旧神探偵事務所の一室で目覚めたサキは、管理人のスガさんに起こされて目が覚める。先日に鷹の羽学園に編入が決まり、今日が初登校の日だったのだ。
さしあたり徒歩での登校で、学園の正門に差し掛かりその門をくぐらんとするも、おりしも砂嵐が舞い上がり。彼女自身は気が付かないが、波乱の幕開けを感じた者が幾人かいたが。
その後学園長への顔見せの後、沼先生のクラスでの学園生活を始めるサキ。先に知り合った山田たちはともかく、同じクラスの園芸部の天野、サキは彼女をエンジェルと呼び、円いメガネの彼女もそれに親近感を覚える。放課後山田とともに園芸部の畑を訪れるも半ば強引に畑作業の手伝いをする羽目になり、めんどくさそうに牛フンの肥料を混ぜて畑を耕す二人だった。そうこうとサキの学園生活は充実したものとなるのだが。
日をあらためて休日を楽しむサキと山田、そして天野。ここで山田の幼少期の頃を教えられる。幼い頃は伯父の片岡と同じようにひ弱そうなこともあって、父の故郷の長野で過ごし、それなりに健康に育つに至る。ちなみに天野も没落したミミズ農家が遠縁にあったと告げられるが。
そうこうと街中を歩いていくうちに、サキたちはあるバイカー集団に呼び止められる。サキの後ろに下がる山田と天野、何者かと誰何するも彼らは旧中央連合のOBで、その中の一人の少女、かつて中央連合の代表、多聞寺忍の遠縁たる菊子がサキに挨拶をする。そもそも彼らは全国の学生連合間で今でも連絡をとっており、先だって大吾が連合本部がある多聞寺邸を訪れサキのことを告げ、力になってほしいと頼み込んだ。もちろん彼らもそれを快諾し、この度の挨拶と相成ったのだ。
現在全国の学園を中心に不穏な動きが見受けられ、それに対して新旧の連合もかつての伊賀、九州の連合と連絡を取っており、彼らもまた協力を惜しまないといっていた。
そして軽い談笑の後、打ち上げと称してとある食堂にサキたちを連れていく。そこは先代サキの少年院時代からの親友アグラが経営している店だった。彼女もやはり昔を懐かしんでサキたちを迎え入れる。そこには息子の六郎も店を手伝っており。彼もまたサキについて親近感を抱いていたのだが初日には表立っては何も言えず、昨日彼女について母親と語り合っていたのだ。これからのことを含めて力を貸そうと彼もまた告げるのだった。

その一方で各地の学園を制圧し支配下に置く学生たちの集団がいた。教師生徒を問わずすべてを蹂躙する彼らは最後まで抵抗する者たちの腕の骨を竹刀の一閃でへし折り。そこの校区を落とすのだった。
その様を、肩にツグミを乗せているかの雲水が遠目で憂いの表情で見守っていた。
「また同じ過ちを繰り返すのか」とつぶやきつつ。

また一方でとある施設のモニター越しに制圧の様を見守るかの老人が佇んでいた。
「泰平をむさぼる愚民たちよ、今度こそ世界は儂の前にひれ伏すのだ」
老人の歪んだ笑いがその一室にこだまする。

後編

郊外のとある小さな剣道場。そこには子供たちに指導をしている男がいた。そこにかの雲水が訪れる。お互い知り合いらしく雲水に呼び掛けるも自分は一度死んだ身と返す。
もはや野心もすっかり抜け、今の平穏な日々に満足を覚えつつもここ最近の学園間の抗争にも危惧をして。ことに自分の息子がかつての自分と同じく、とある組織に加入して暴れ回っているという。対する雲水もその息子のことを含んで自分に任せろと応え、道場を後にする。
変わってアメリカ、仕事のために車に乗り込もうとするジミーは、何やらに気付き車から離れ、傍らのSPに機械の端末のスイッチを入れさせるやその車が爆発する。
「どうやら“猫”も甦ったんやな」と、ことの事情をひとまずは飲み込み、駆け付けた警備をはじめ人員に指示を与える。
日本の公安当局でも、ジミーから連絡を受けた局長のムウ=ミサと美鈴。机上にあるあのヨーヨーとともに、いざとなればこれを彼女に渡すよう美鈴に言い渡し、美鈴も了承とともに部屋を後にする。

そして鷹の羽学園にて平穏な学園生活を送っていたサキたち、しかしその平穏が破られる時が来た。
まず数台のバイクと装甲車が学園のフェンスを突き破り、たちまち学園を制圧していく。
校外の農園のことが心配で駆け付けた天野、しかしその燃え盛るハウスとそれに悦に入る女エージェントに憤り、攻撃を仕掛ける天野。しかしそのエージェントの顔の皮がはがれ、そこに機械の顔があらわになる。首をつかまれ締め上げられんとする天野をまずツグミが飛び込んで難を逃し、続いて聖子校長が天野を助け出す。
続いて生徒たちを襲撃する学徒兵。それを阻まんと踏み止まり、仲間たちを逃がさんと竹刀を手に立ちはだかる山田。しかし木刀の学徒兵に内なる怒りがわき上がる。
「俺の親父は剣道で名を上げんとした。だがとある女のためにその道が絶たれ、今ではわびしい剣道場の師範に甘んじた。そう、お前ごとき軟弱者が俺の前にいるのは反吐が出る」
対する山田も「まさかあんたは、そうだな、僕のおじさんはあんたの親父に殺されたんだ。それをサキのおばさん(山田の認識)が仇を取ってくれた。それを恨みに思うなら僕は受けなきゃいけない」
と、学徒兵宗方に立ち向かうが、木刀の一閃で竹刀は弾き飛ばされ、山田も吹き飛ばされる。
「せめて苦しまずに死なせてやろう」と宗方が木刀を上段に構え直す。しかしそこに現れたあの雲水が阻み、まず山田に逃げるように告げ、それに従って山田は去っていく。
対峙する雲水の静かな気迫に宗方も一歩も動けない中、雲水は静かに告げる。
「お前の父はうわべの強さが故に内の弱さに負け、身を滅ぼした。お前も父と同じ過ちを犯すのか」
雲水の言葉に圧されつつも激昂した宗方は飛び掛かるも、棒の一閃で木刀をへし折られ、突き出された棒を前についにはひざを落とす。
さらには剣蔵も習った空手で学徒兵から生徒を護らんとするがやはり多勢に無勢。「親父のようにはいかないのかと」と押される剣蔵にバイクの美鈴が現れて敵を蹴散らしていく。
旧知の剣蔵の「美鈴おばさん」との呼び掛けに小突いて返しつつ剣蔵以下生徒たちをよくよく導いていく。
そしてサキは数人の生徒たちと一緒に脱出せんとする。そこに1匹の白ヘビが導いてくれるかのごとくサキもそれについていく。やがて校舎に出るやそこには数人の学徒兵がエージェントとともに待ち構え今まさに襲い掛からんとする。
そこに美鈴のバイクが現れ、学徒兵に応戦していく。続いて現れた剣蔵の心配をよそに、美鈴はそのままサキにあのヨーヨーを投げ渡す。
受け取ったサキの脳裏に自分とよく似た女性が戦っている様が思い浮かぶ。何やらと思いつつも一つの核心に至る。
「これは、このヨーヨーから感じる想いは、その想いを私が受け継がなきゃいけないなら・・・・・」

その一方でとある館で一人の老人が何やらを感じ取り、いら立ちとともに憤慨する。
「また儂の邪魔をせんとするか、サキよ」

そのうちに、山田や天野がカラスの導きで合流し、ある程度バイクの美鈴が退けた学徒兵に向かい、サキはヨーヨーを構える。
「てめえら、許せねえ!」