サイレントナイト翔・バトルナイト翔-KAKERU-

概要:原作レビュー~その後の傾向

90年代初頭、かの聖闘士星矢の後連載として車田先生が満を持して世に送り出したのがこのサイレントナイト翔(ショウ)であった。
あらすじとして、翔という一人の少年が妖精のような少女シーリンと出合い、自身がこの世の邪悪と戦うサイレントナイトであると告げられる。同じく襲い掛かる異形の敵と戦い、さらには彼らを総括する神人類組織ネオソサエティが差し向けた強敵アーサーと闘い一旦は敗北するも、シーリンの命をかけた治療と翔自身の潜在能力によってパワーアップを果たす。
しかし体力を消耗したシーリンは敵の手に落ち、救出せんと敵の館に乗り込み、先のアーサーと対峙する。その時ソサエティの領主直属のナイトたちがアーサーともども抹殺せんと乗り込むも、対してシーリンの仲間のナイトも加勢したかと思いきや、彼女を見捨てる発言のため翔が反発し、自分一人で戦うと告げ、結局戦いはこれからと連載は終了してしまったのだ。

とまあ星矢の後連載として描かれた翔だったが、いざ蓋を開ければその星矢の二番煎じ感が強く、いまいち盛り上がりに欠けた結果の連載終了といったところ。とはいえこの翔も翔で結構読めた作品なので煮えきらない感もしないでもない。
そこで編者の意見を早々述べるに、編者としても翔の続編を期待するよりも、いっそ設定やストーリーの再構成しての、新たなる“翔”の物語を考えてもいいかもしれない。
まず翔の失敗から、少年エース(KADOKAWA)にてBT’Xを連載し、これがひとまずのヒットとなる。
さらには紆余曲折のすえに星矢の続編やスピンオフ作品も展開し、特にもう一つの星矢ともいえるセインティア翔のヒットも記憶に新しい。
続いて星矢自身の派生作品について、まずはサイレントナイト翔がそうであるのだが、これは後回しにして、各局各スタジオがこぞって各作品を世に送り出した。その代表格ともいえるのが美少女戦士セーラームーンであり、それを継承しているのがプリキュアシリーズである。
ちなみにジャンプにて連載しているヒーローアカデミアも星矢の派生作品ともいえるがこれもさておき、
それを踏まえて翔でも本当の意味で星矢の後継作品に相応しいものとするために、まずは先述のプリキュアの要素をあえて組み込んでのリメイクを組んでみた。

その名も、

バトルナイト翔KAKERU

ともかくもこの翔(カケル)が令和の神話足り得るか、ということでひとまず記しておきたい。

リメイク予想:バトルナイト翔ーKAKERUー

第1話:たたかうナイト、ファルコンのカケル 
泣きながら赤子を抱き野道を駆け抜ける一人の少女。
やがて足取りを緩め、赤子をあやしつつ歩むが、赤子が泣き出したその時、謎の一団が少女を取り囲む。
「その赤子を置いていけ」と筆頭格の男が要求する。
しかし少女は男を裏切り者と呼んで拒絶する。しかし少女は次第に追い詰められ後、赤子を抱きしめつつ断崖の底へと飛び降りるのだった。

それから約十年後
私立神光学園

この日も授業を終え、一足早く帰宅の途につかんと窓から飛び出す一人の生徒がいた。
しかし女性教師は少しも動じず、先回のテストの結果から補習を受ける生徒を告げる。まず挙げられた天宮翔(あまみや かける)の名とともに、先に窓から飛び出した少年が、先生の仕掛けた罠で宙づりになっていた。
結局補習を受けることになった翔。その中には本来優等生の潮海鳴もいた。彼女は復習の意味合いで補習を受けることにしたのだ。
後に帰宅した翔、出迎えた祖父の隼人は補習のことは承知しており、空手の稽古は延期すると告げて夕食の支度をしていた。
その夜寝床にて先生の言葉を思い返していた。
「完璧を期すに越したことはないが、常に最善を心がけよ」という言葉を。
一方の隼人も、幼いころから両親を失った翔を引き取り、今まで空手の修行を課しつつ育て上げた頃を思い起こしつつ「もうすぐ時かもしれん」との思いを馳せる。

そして後日、学園界隈を不敵に見やる一人の男、 学園にいる者の動向を探れとの命で「エボリューション!」の掛け声とともに異型の姿に変貌する。
後に学園へと登校する翔だが校内の異変に気が付き駆け付けた先には、件の男が学内を暴れ回っている様だった。何人かの生徒が被害を受け負傷していく中、男に飛び掛かる翔。対する男も翔に何かを感じ、改めて名乗りを上げる。自分はネオソサエティのバトルナイト・アントだと。
何やらと理解しかねる中、じいちゃんに詫びつつも、これ以上学校を荒らさせないと渾身の爆裂拳を繰り出すもアントには効かない。
そんな折なんと翔の頭に隼人の声が響く「こいつは並の相手じゃない。お前の心の中の力に呼び掛けろ」と。
そして頭に浮かんだもう一つの言葉「エボリューション!」の掛け声とともに、心の中の力が鳥の形を取り、翔と同調して全く違う戦士の姿となる。
「貴様、ファルコンのナイトか」とのアントの問いから、仕切り直しとばかりにアントに飛び掛かる翔。そもそもアリの能力で強大な力を有するアント。力比べにてアントに押されつつも、着実に拳を当て、やがて自らの必殺技、ファルコンバーストが放たれる。
たしかに翔の拳は手応えがあったが、いまいち決め手とはいえなかった。
しかし「そこまで!」という言葉とともに二人は閉鎖空間に閉じ込められ、その結界を施した者であろう謎の女性の声が響く。
「ホーリーナイトの権限で二人のジャッジを執り行う。バトルナイト・エスクワイア・アント、目的のために学園内を荒らし回り被害を与えたことは不届き至極。よってその力を剥奪します」
と、アントのアーマーが破壊され、何処かへと飛ばされた。
「それからペイジ・ファルコン、初めてのバトルながらよくがんばったわね。その正義の心を忘れなければ、ナイトの力は貴方とともにあります」
と、辺りを漂う力の渦が翔に入り込んでからもとの校庭に戻る。姿もまた制服姿に戻っていた。
「この力が俺の力だったら、その正義のために闘うしかないな」
と天を仰ぐ翔であった。

数日後、先の事件から落ち着いた学園に駆け足で登校する翔、
再開した授業にて前回のテストで好成績を上げたことを告げられ思わず口を開く。
「完璧に越したことはないけど、常に最善を心がけなきゃな」
「ええ、この次もがんばってね」
アイナ先生の励ましに、思わず「押忍」と応える翔だった。
といったところで、バトルナイト翔の戦いは始まったばかりだった。

第2話:だいちのナイト、ラクーンのコウスケ
「俺の名は天宮翔(あまみやかける)ごく普通の中学生、のつもりだったが、
なぜかネオソサイエティって変な奴らが攻めてきて、なし崩し的に俺もファルコンのバトルナイトに変身、エボリューションって言ったけど、ともかくそいつになっちまった。
それで敵のナイトと渡り合って、いろいろあった後にやっつけることができたんだ。でもこれからどうなるか分からないから、まったく面倒なことになったもんだぜ」
と、駆け足で登校する翔。

昨夜、隼人から思いがけず前回のことについて話を受けた。
翔がなったのはバトルナイトという伝説の戦士でそれぞれの自然、ことに動物の能力を受けて戦う希望の戦士ということだ。今は多くは語れぬが、翔には仲間がいて、まずはそれらと力を合わせるのだ、と。
その後アイナ先生の授業をひとまずこなしてから、放課後親友の豊原耕助の祖父が経営するトヨハラファームで収穫の手伝いを行う。時折天宮家に野菜を分けてもらう代わりに仕事を手伝うのだ。
ところ変わってとある港の倉庫跡で、何人かの人影が先の戦いにて仲間のアントが倒されたことを受け何らかの対策を立てねばならぬと一人の男が名乗りを上げる。
次の日耕助と祖父の耕作が駆けつけた先のファームの畑が何者かに荒らされており、荒らされた畑の中から「ここに、いるはずだ」という声が聞こえる。それが畑を荒らしたと憤る耕助、そこに耕作が変身:エボリューションを促し、はたして耕助はラクーンのナイトに変身する。
一方、先の戦いにも感じた悪い感じを受けて、翔もファルコンにエボリューションする。その上でマスクを下げ、正体をひとまず隠す。
やがて敵を攻めあぐねる耕助たちのもと翔が飛んできた。耕作はすぐさま翔のことを見抜き、バトルナイトのことは隼人から聞いていたとのことだった。
ともかく畑から敵を離すため耕作を耕助に委ね畑から離れるように促しつつ、自身が囮になるため敵をおびき出す翔。はたして畑から離すことができたが、ややあって翔そっちのけで別の方向に逃げる耕助たちを狙う。
やがて逃げた耕助たちに敵の手が迫り、耕作ともども吹っ飛ばされる。その上で姿を現す敵、ネオソサエティのナイト、モウルと名乗り、あらためて二人に襲い掛かる。
しかし追い付いた翔が攻撃を仕掛けるも、モウルは再び地面に逃げてしまう。
なんとか引きずり出せないかと思案している中、思い付いた耕助は地面を踏み鳴らして波動を送り込むアースウェイブステップなる技を繰り出し、はたしてモウルは地面から姿を現す。そこですかさず翔がファルコンバーストアッパーを繰り出し打ち上げ、とっておきの技を繰り出すよう耕助に呼び掛ける。それに応え耕助も打ち上げられたモウルを組み伏せ、アースクラッシャードロップで投げ落とし倒していった。
後にファームに帰ると、荒らされた畑の作物はほぼ元通りに育っており手入れをすればまた収穫できるという。一体誰がもとに戻したのかという翔、一方で近くの木陰で微笑みつつ見守る一人の女性がいた。
後に隼人が駆け付け、翔はもちろん耕助もバトルナイトとしての素質があると見込んで今まで鍛え上げていたとも告げる。そしてあと一人仲間がいるというのだが、それが一番の堅物だということだが、しかしこれからの戦いのために彼女の力も必要だと隼人は告げるのだった。

ところ変わって深窓の屋敷。そこで華道に興ずる少女とそれを見守る初老の女性。
「どうやら二人目も無事目覚めたようですね。なればあなたの出番も遠くないでしょう」
「はい、おばあさま」と応えたのは翔のクラスの優等生、潮海鳴であった。

第3話:マーメイド けだかきみずのナイト
ある日の午後の交差点、幼い女の子の飼い犬が、勢いよく走り出す。それと同じく、走ってきたバイクがブレーキが利かず、その飼い犬にぶつかってしまいそうになるも、何かの人影がその運転手と飼い犬を救い出し、あとに残ったのは信号機の柱にぶつかったバイクと、女の子の飼い犬を抱いた形の歩道に座り込んだ運転手だった。それを遠くから見ていた少女はそのまま交差点を後にする。
変わって学園にて、その日は体育のドッジボール、翔が気合のこもったサーブを放つも、勢い余って隣の屋敷まで飛んでしまった。しかしボールは勢いよく弾き返され、翔のもとに飛んでいき、それを受け止めることとなった。そこに駆け付けてきたのはなんと優等生の潮海鳴、気遣う彼女に大丈夫と返す翔。その後で鳴も小声で「ちょっとやりすぎかしら」と案じたりもしたが。
後日隼人が学校隣の潮海邸に招待されたので赴いてこいと告げられ、赴いた先に、鳴と祖母の渚、そして何故かアイナ先生も待ち構えていた。
渚婆さん主催でお茶会に興ずることとなり、翔もアイナの指導の元、ぎこちない中茶の湯に臨む、その上で女性陣の談笑を聞き流しつつ時がすぎ、この場を離れんとして立ち上がりざま足のしびれに手間取りつつ帰途に就く。修行が足りないと釘をさすアイナと、また遊びに来るよう呼び掛ける渚婆さんの呼び掛けを背に受けて。
港町倉庫跡にて数人の男、ネオソサエティのナイトたちが事態の趨勢を憂慮していた。すでに二人目のナイトも覚醒し自陣営のナイトも二人倒された。三人目の覚醒も時間の問題だと誰もが語る中、座長格の男が自らが乗り込むと告げて場を後にする、後に残ったのは呆然と見守る残りの男たちと、天井上の鉄骨に寄り掛かり、つまらなさそうに見守っていた少女だった。

次の日、その男が学園周囲に現れ、行動を起さんとした時、先に居合わせた少女が木の上から「闇雲に暴れても埒があかず、アントやモウルの二の舞いになりかねない」と告げる。さしあたり近隣の屋敷に調べを入れろとの忠告とともに少女は姿を消す。それならばと男はライノのナイトへとエボリューションし、件の潮海邸に踏み入れんとする。
学園内では翔が、何かのイヤな気を感じ、同じくアイナが近隣にての爆発音に対して全員の避難を指示する。翔も指示に従うふりをして教室を抜け出す。その後でアイナが鳴に何らかの指示を与えるのだが。
潮海邸に踏み入れたライノの前には、なんと渚婆さんが立ち塞がった。はじめ穏やかな応対で、ただならぬ雰囲気の招かれざる訪問者と見た後で、不浄なるものは通さないと強き意志で拒絶する。はたして激昂したライノは渚に突進し、渚もなんと受け止めんとするも、腰の不調を覚えそのまま吹き飛ばされる。
そこにファルコンとなった翔が受け止め、案ずる翔に先日翔が投げたボールに比べればと渚も気丈に応える。そのうちライノの攻勢を渚をかばいながら受け止めるも、渚も自分にかまわず戦えと促す。そんな埒があかない中、隼人と途中合流した鳴も駆け付けてきた。
そんな鳴に渚を連れて逃げろと呼び掛けるも、渚は今こそ心の力を呼び起こすよう鳴に告げ、エボリューションの掛け声とともに、鳴もマーメイドのナイトに変わり、敢然とライノに立ち向かうのだ。渚の介抱を隼人が引き受け、翔も鳴の援護に回らんとする。
ライノの突進を受け止めつつ投げ落としたり体当たりを繰り出したりと、着実にダメージを決めるも、未だ体力に勝るライノの強力な拳に圧倒されてしまう。
吹き飛ばされた鳴を受け止める翔。その際自分を名前で呼んだことに軽い喜びを覚える鳴。後に駆け付けた耕助とともに、単独で敵わなければと、力を合わせて当たることにする。
まず耕助がライノの突進を受け止めつつ宙に投げ飛ばし、その上で翔のファルコンバーストを、そして鳴の必殺技アクアカノンショットでライノを撃破していった。
その有様を件の少女が「ばっかみたい」と見届けてから去っていく。

潮海邸にて渚の手当を済ませ、後に訪れた耕作とともに今までの事態をこの場で告げんとする隼人。そんな中アイナも入ってきて、ナインテイル(九尾の狐)のホーリーナイトにエボリューションする。先のアント戦のジャッジやモウルに荒らされた畑を再生させたのも彼女だったのだ。
それにくわえてかつての隼人、耕作、渚もそれぞれの先代のナイトで、翔たちがそれを継ぐ形となった。だいたいの事を理解できた翔だったが、まだまだ知らないことがたくさんある。いずれ順を追って学べばよいと気がついた渚が応え、それを受けて来たるネオソサエティの攻勢に立ち向かうことを誓う翔たちであった。

少し時がたち、とある林の中、駆け抜ける人影があり、大木の枝の上で留まり一人の少女が姿を現す。
「どうやらうまくまけたみたい。聞けば近くにあの人の家があると言うけれど」
一息ついた少女は再び飛び立っていった。