ブラックジャック

ここでの記事では2004年ごろに放映されたアニメ・ブラックジャックを参考に
アニメ未放映分のエピソードをまあ手前勝手ながらアレンジしてストーリーを予想しようという企画です。
そもそも当作品は手塚治虫先生の実子、眞氏が監督を務めたことでも有名で、父親の治虫先生の死生観に
意見を加えてアレンジを(それでいてまあ原作のテイストをなるべく崩さないで)行った作品として作られました。
そこで編者としても、その点に思いをいたし、アニメ未発表作品を中心にアレンジ予想をお送りしたいと思います。
なお、当記事は一個人の創作で、実際の手塚先生の作品と、それに伴うアニメ作品とは
一応関係はございませんのでその点をご了承ください。

灰色の館の兄妹(原題:灰色の館)

 ある日、BJはとある深窓の館に招かれて、とある女性に兄の治療を行うように依頼される。BJは地下室に監禁された男―火傷で顔面が変形して数年がたった―を訝りながらも手術をする。
 後日、BJは提示した報酬の数倍の額のアタッシュケースを差し出される。真意を質すと、かつて妹はたびたび兄から虐待を受け、ついには思い余って兄を焼殺しようとした、しかし死にきれなかった兄をそのまま監禁し今に至ったという。

 憤慨して抗議するピノコ、それをよそに、さらに妹は兄の偏執の原因が母が自分を生んですぐに死んでしまったことについて、それで兄は自分が母を殺したと思いこんだこと、そして自分が兄への愛情を思って憎み切れなかったことを告白する。

 その時、兄が手に松明を持って部屋に入ってきた、妹に復讐をするためである。
「やめるんだ、彼女を殺しても何も変わらない、ただあんたの心の傷を深くするだけだぞ」
 割って入ろうとするBJを制止して妹は前へ出る。
「兄さん、これ、お母さんの服よ、いつも好きだったお母さんの、服・・・・・」
「・・・! ・・・ママ、ママ・・・・・」
 その姿を見て、兄は泣き崩れる。手に持った松明を床に落とし、床に炎がゆっくりと広がっていく。妹はそんな兄をそっと抱き寄せる。自分はそのまま兄とともに逝くと言い、この場を離れるようBJに告げる。
「先生、いろいろとありがとうございます・・・兄さん、これからはお母さんと一緒に三人仲良く暮らしましょう・・・・・」

 やむをえずアタッシュケースを手にピノコを連れて館を後にする。二人は炎に包まれて崩れゆく館と運命を共にする。
「彼の身体の傷は治せても、その心だけは治せなかった。ただ母親の愛以外は。結局わたしは何も出来なかった」
 断腸の思いでBJは報酬の入ったアタッシュケースを炎の中に投げ入れる。


悪魔の軍人(原題:魔王大尉・キャプテン・サタン)

 ある日、BJ邸に一人の軍人が運び込まれた。名はケネス大尉。かつて東南アジアのグチャン村の虐殺に関与した男である。そんな彼が先日暗殺事件に巻き込まれ、頭部に銃弾を受けBJに摘出手術を秘密裏に行うよう依頼した。
 それ同じくあのグチャン村の生き残りの子供たちが事件で逮捕された実行犯の弟を筆頭に手術の中止を求めBJを訪れた。それと前後してその弟は兄に面会し、そこで殺し損ねたケネスのことは忘れて帰れと兄に諌められたのだった。
 ひとまずBJは子供たちを退がらせてケネスの手術を行う。その際子供たちを立ち会わせることになり、ケネスは大きく動揺するが、麻酔が効きそのまま意識を失う。

 ケネスの手術を見守る子供たちにBJは告げる。確かに自分は金のために仕事をするが、一度受けた仕事は自らの誇りのためにやり遂げる、と。
 その言葉に子供たちは何も言えなかった。手術は無事成功した。しかし、ケネスの脳裏にはあの子供たちの瞳が焼きついていた。

 後日輸送機で本国に搬送される途中、ケネスの脳裏にグチャン村の惨状が浮かび錯乱する、そんな彼の中に一筋の光明が差し込む。そこに歩み寄ろうとするケネス。
「神よ、我が罪を許したまえ」という言葉とともに。

 しかしそのケネスが向かった先は輸送機のジェットエンジンだった。

 次の日、BJ邸にケネスの自殺が伝えられた。その翌日、ことの詳細を知った村の子供たちは故郷へと帰っていく。
 また銃撃犯の男も10年以下の実刑判決を言い渡され、潔く勤めを果たすと言う。
 別れ際「僕らもまかり違えばあの男と同じになっていました。先生に教えられたことを忘れずに、兄さんが戻ってくるまで村を復興したいと思います」
という言葉とともに、船へと乗り込んでいく。


いのちの叫び(原題:その子を殺すな)

 ある日来日した一人のアフリカ人、彼の名はハリ・アドラ。人の身体に手を入り込ませて病気の部分のみを取り除く、いわゆる心霊医師だった。
 彼は道行く病院で重い病人を自らの術で治しつつ、やがてとある“声”を聞く。そこに雑誌社の記者がブラックジャックとの対戦を持ち掛ける。今BJはとある母親の堕胎手術を行おうとしているので、それを阻止しつつ赤ん坊を産ませてみてはという。それは折しもその声の主、生まれてくる赤ん坊の声だというのだ。
 その病院ではBJがとある妊婦の堕胎手術を行っていた。子宮外妊娠ということで赤ん坊を堕ろさないと母体の命が危険であることだという。そこにアドラが現れ、自分は赤ん坊の「助け」を求める声を聞いたと告げる。その子を助けるため、先に記者たちから聞いた、BJが金のためだけに医者をやっていることをとがめつつ、自らの超能力でメス等医療器具を破壊し一旦はBJを追い出す。
 こうしてアドラは母体から赤ん坊を摘出させることができた。だが産まれてきた赤ん坊は、脳に障害を持っていた。これも前もって調べた結果であったのだ。
 BJは告げる「この子を死なせた方が母親を救う道だったんだ、どのみちこの子は永くは生きられない、その時まで生きることの苦しみを与え続けるつもりか・・・楽にしてやれ、それが慈悲ってやつだ」と。
 アドラはすべてを理解した、赤ん坊は無事産まれることではなく、障害を持って産まれることの苦しみから助けてほしいことを。アドラは断腸の想いで赤ん坊の心臓を止める。
 母親に何かを告げて去り行くアドラ、BJも特ダネを求めて殺到したあの記者たちを追い払いつつ彼を見送る。
「アドラ、医者というものは時には人の生き死にを決めなきゃいかん時がある。人を活かすためなら、わたしは喜んで鬼や悪魔と呼ばれよう。今あんたにできることは、あの子が生まれ変わることを祈ることだ」
 後に母親はBJに手術の結果を告げんとするBJ
「・・・先生、私の、赤ちゃん・・・・・」
「・・・奥さん、今回の件ではお子さんは残念ながら、申し訳ない・・・・・」
「・・・いえ、あの人が赤ちゃんの言葉を、この次はちゃんとした子供に産まれてくると・・・・・」
「・・・そう、ですね・・・・・」
 BJもその言葉を信じる気分になり病院を後にする。
 数年後、故郷に戻ったアドラは、あの子供が再び母親から健康な子供として生まれたことを感知し、神に感謝するのだった。


国境の狼女(原題:オオカミ少女)

 ある日、BJは中央ヨーロッパの某国にて依頼を済ませて帰国の途につこうとしたとき、突然警備兵に止められる。手術にあたった依頼人が亡命したことでBJに亡命ほう助の疑いがかけられたのだ。
 ここは連行されるわけにはいかず、BJはやむなく逃走することになる、その途中足を滑らせて崖下に転落する。

 気がつけば峠の一軒家、そこの少女に助けられたのだ。しかしその少女は幼いころの事故で顎が砕け、その異様な顔立ちから狼女と蔑まれて以来人目を避けて暮らしていたのだ。
 彼女が言うにはほんの気まぐれでBJを助けたのだと、それならばとBJも彼女の顎を治すために手術をする。その手術は比較的簡単な手術だったのだ。
 数日後、包帯をとり少女の顎は元通りになった。これで人目を気にせずに暮らしていけると喜ぶ少女。BJもそのまま帰国するべく旅の支度を済ませ、別れもそこそこに小屋を後にする。
 しかし途中、少女の話から以前ここにたどり着いたもう一人の人物を助けたのことを思い出し、それが依頼人であると推測する。すぐさまBJは少女の元へと戻る。
 そこにはあの警備兵が押しかけていて、少女にBJや依頼人のことを聞こうとする。しかし少女の頑なな言に銃を構え、逃げようとする少女の背中を撃つ。
 警備兵は少女にとどめの一撃を放とうとするもBJの投げたメスに阻まれる。幸い銃弾は急所を外れ大事には至らなかった。
 応急処置を済ませBJは少女を担ぎ国境へと急ぐ。そこにはかつての依頼人のメッチャ氏とその支援者がいてそのまま保護される。

 後に帰国したBJのもとにあの少女から手紙が送られた。彼女はあの国の政情を改善すべく奔走するメッチャ氏のもとで元気でやっているということだ。
 一陣の風と共に邸宅のバルコニーにて彼女の幸せを願うBJであった。


不良生徒と教師(原題:話し合い)

 ある日、BJはピノコを伴っていつもの喫茶店を訪れる。そこで和戸からある熱血教師のうわさを耳にする。その教師の特徴からあることを思い出しその高校を訪れることにする。
 そこでは不良学生の〆沢(しめざわ)が幅を利かせていて学内を恐怖に陥れていた。その教師はかつてBJの旧友であり、師である本間医師の患者でもあった。BJはその時の治療代が滞納していると告げるが、その実彼と一度話がしたいということだ。しかし教師はその気がないとBJを帰す。

 後日教師は〆沢に屋上まで連れ出されてリンチを受けていた。駆けつけて制止しようとするBJ、それに激昂する〆沢の拳を受け止め投げ飛ばす。しかし勢い余って〆沢は屋上の階段に頭から落ちて頭と延髄をしこたま痛めつけた。逃げようとする手下の生徒を一喝して引き留め、救急車を呼ぶように言いつける。
 ひとまず重傷の教師の方を手当てすることにし、教師は一命を取り留める。しかしその間に〆沢は苦し紛れに首をひっかいて症状を悪化させる。救急隊員の手際の悪さに舌打ちしつつも「どうだ、死ぬほどの苦しみというのは、こいつもお前が与えた彼の痛みや苦しみに比べりゃケシ粒みたいなものだ」とうそぶきつつも〆沢を治療する。
 こうして二人とも一命を取り留める。その夜、教師とBJはじっくりと話をすることとなる。

 かつての教師は実は手のつけられない不良学生だった。しかし彼を更生させるために親身になって説得にあたった先生がいた。当然彼はそれに反発し、ある日歩道橋でその先生を激昂して下の道路に突き落とそうとした。しかし勢い余って二人とも転落して車にひかれてしまった。そしてその二人の治療にあたったのはあの本間医師だった。結局彼自身は助かったものの、その先生は治療のかいなく死んでしまった。その際に突き落とされたことは一言も口にせずに。
 そのことがきっかけで自分は教師の道を選び、一人でも多くの不良学生を更生させようと働くことを決意したのだと。そしてその会話を、うつろな意識の中、〆沢も聞いていたのだ。

 後日、いつもの店に教師が訪れ、先に訪れたBJとともにあの〆沢の近況を送られてきた手紙にて語る。
 結局〆沢は退学することとなり、その代わりに大検にて教育大学への受験を目指すために猛勉強をしているという。自分もまた教師を目指して自分のようなはみ出し者を更生するために働きたいという。
 そして、それで得た給料をいつか自分と教師のその時の治療代に充てたいと手紙は締めていた。

 しかしBJにはもはや代金などどうでもよく、その教師との再会を改めて確かめ合い、コーヒーを傾け合うのだった。


誠意の行方(原題:タイムアウト)

 ある日、BJがピノコとの買い物を済ませ家路につこうとしたとき、交通渋滞に巻き込まれてしまう。そんな中、鉄骨を満載した大型トラックのワイヤーが切れ,近くで遊んでいた男の子がその鉄骨の下敷きになってしまう。駆けつけたBJはすぐさま鉄骨の中に入り子供の安否を確かめるも子供はもはや虫の息であり助け出そうにも鉄骨をどかさなければ不可能だった。さらにクレーン車を呼ぼうにもこの渋滞の中どうにもならない。絶望しかける母親。そんな中トラックの持ち主である企業の社長が子供の救出にいくらかかってもいいとも告げる。とりあえずBJは迷惑料も兼ねて5千万円を請求し、一応の承諾を得る。ここでBJがとった方法とは子供の手足を切断し、取り出した後でつなげるといった方法であった。周囲は無茶だと告げるがことが一刻を争い、もはや議論の余地はない。結局手術は敢行された。
 子供を手足ともに助けだし、BJも脱出したまさに間一髪、鉄骨が崩れ出した。そしてすぐさま近くの病院に子供を搬送し再手術を行う。こうして子供の手足は無事接合した。幸い成長期にあたっているので適度なリハビリを行えば元通りの動くようになるとBJは告げる。

 しかしいざ報酬の交渉にあたるも、企業側は支払いを拒否し、後続の軽トラックの運転手の青年にその責任を擦り付ける。同席したピノコが憤慨するのをなだめつつBJはその場何も言わずに去っていく。
 後に青年を訪れると、青年の方は前の車のワイヤーがちぎれたことが原因と反論する。そこでBJは「だったら裁判に持ち込むんだな。お前さんが正しいと思うならそれを貫いてみろ。もちろん、わたしも協力する」と告げる。

 こうして青年は企業を相手に裁判を起こす。それには写楽たちや子供の母親も協力する。世論も企業の責任を問い、企業側も青年を脅迫すべく暗躍するもBJがそれを阻む。
 一方子供の方も青年の奮起に応えるかのごとく、リハビリに励むのだった。
 こうして裁判によって企業側の過失が認められ損害賠償を勝ち取った。
 後日、青年と子供を訪れたBJに青年は「先生のおかげで裁判に勝つことが出来ました。今の手持ちはこれだけしかありませんが・・・・・」と、なけなしの金が入った封筒を渡そうとする。
「さて、何の話だ、わたしは君に誠意を見せろと言ったが、金をよこせとは言ってはいない」
 と、青年の金を謝絶し、元気になった子供が差し出した風車を受け取り、去っていく。


誇りある医者(原題:ダーティジャック)

 ある日、幼稚園の遠足のバスとBJが運転する車は並んでトンネルの中へ入っていった。そこで突然の地震でトンネルが崩れてきて生き埋めになってしまう。ほうぼうの体で車から脱出したBJはバスから脱出していた運転手と先生と園児たちと出くわす。中には怪我を負っている子供いた。彼らを治療しようにもBJは医療道具を車に置いたままで手当てもままならない。このままではみんな生き埋めになって死んでしまうと取り乱しそうになる運転手をBJは諌めつつ、空気の流れを感じ酸欠の心配はないと悟り、ライターで辺りの状況を調べる。
 ようやく空気の漏れ口を発見しそこから抜け出せると思ったがその穴は子供一人がやっと入れるほどの穴だった。
そんな中、子供の一人のが穴の中へと入る、しかし途中戻ってきたかと思ったら何とつぶれた車の中から医療道具を取り出してBJに渡し、再び穴の中から脱出を試みる。
 こうして救助を待っている間子供たちの治療にあたり、先生と運転手はBJの素性を知ることとなる。「子供たちから治療代をふんだくるつもりか」と軽く毒づく運転手にBJは答えをはぐらかしたまま何も応えない。しかし先生はBJに何かしらの信念を感じたかに見えた。
 そうこうとしているうちにそこから重機の音が聞こえ、岩の撤去作業が行われていた。内部が崩れる心配はないものの、作業の振動によってバスの燃料が漏れだしそれが引火する。その先には医療道具のバッグが置かれていたのだ。
 医療道具をかばおうと火の中に飛び込んだ先生の服に火が引火し、すぐさまBJと運転手が火を消し止めるが先生は身体に火傷を負う。しかしようやく撤去を完了し、駆け付けた救急隊員の救助もあってかろうじて一命を取り留める。
 後に駆け付けた子供と父親の社長に他の子供たちと先生の無事をBJは告げる。その際社長に治療費の請求と子供たちの保障を約束させる。それに対し運転手も悪態をつきながらもBJの信念に気づき始める。
 こうしてBJは病院を去る、それを見守る先生たち。先生は「あの人は社会の病と闘っているのだ」と胸に刻み込むのだった。


最後の狩人(原題:戦場ヶ原のゴリベエ)

 ある日、久しぶりにピノコを伴って温泉旅行に出かけたBJは、とある親子が近くの山にすむという巨猿に襲われて負傷したという通報を受ける。
 近くに医者がなくやむなくBJが治療に当たる。その際に町長に治療費を請求することとし、その傍らにいた猟師が毒づきながらもその巨猿のことを語る。
 ここ界隈はかつての古戦場から戦場ガ原と呼ばれ、そこには猟師がゴリベエと呼ぶ巨猿がいた。ひなびた村に温泉が湧き、そこに人が集まるようになると、それを狙ってそのゴリベエがたびたび人を襲うという。かつて猟師はそのゴリベエを討ち損じ、対してゴリベエも頻繁に人を襲い続けるという。
 それに対しBJは「ゴリベエの件はあんたが奴を狙い続けているからじゃないのか」と指摘するが猟師はそれに反発し銃を持って飛び出してしまう。BJもそれを追う。
しばらくして猟師が巨猿ゴリベエと対峙していた。猟師が構えると突然落雷が起り猟師が銃を手放したその時ゴリベエが襲いかかる。BJはメスを投げ付けて退かせる。「ここはわたしに任せろ」と猟師にとどまるように言い、ゴリベエの後を追う。
 探しているうちにBJはとある洞窟の中に入る。そこには半ばミイラ化した雌猿と2匹の子猿が居た。その雌猿の胸には銃で撃たれた跡があり、そもそもゴリベエ夫婦はその子猿のために餌を求めるために人里に現れ、その際に母猿が猟師に撃たれたのだ。そしてゴリベエは妻のかたきとばかりに人間を襲い続ける。もちろん子猿を育てながら。
 そこに現れたゴリベエ、敵意をあらわに唸る彼に、BJはたまたまピノコに渡された食料を子猿に与える。少し警戒を解くゴリベエにBJはメスを抜いて手当てをして帰っていく。しかしその様子の一部始終を猟師は見届けていた。

 後日ゴリベエがBJの前に姿を現した。あの時忘れてきたメスを届けに来たのだ。後に帰り際、猟師が待ち受けていた。
 しかしお互いに敵意はなく、ある種の安堵感が漂っていた。猟師が銃を構えるとゴリベエは猟師に飛びかかる。
 銃声が鳴り響き、駆け付けたBJが見たものは、撃たれてこと切れたゴリベエを前に満身創痍の猟師が座り込んでいた。
「これで、よかったんじゃよ。わしらぁ、こうすることでしか、分かりあえなかったんじゃ」
 その猟師の言葉をBJは否定することは出来なかった。
「クソったれが・・・・・!」


BJ捕わる(原題:宝島)

 ある日、何者かに拉致されたBJ。それは彼の財産を狙うべく、前々からつけ狙ってチャンスをうかがい、今の事態で拉致に到ったのだ。
 彼らは尋問の末に「五条ミナ」と言う女性の名を割り出し、彼女が金を持っていると読んでその地に連れて行くように強要する。
 一方写楽はその事態を目撃しており、マスターたちに連絡。いち早く救出に乗り出すのだが。
 誘拐犯たちがBJを伴い赴いた先は、自然残るある島であった。BJが言うにはミナは既に亡く、その島は彼女の墓が建っていたのだ。
 BJは若いころ懇意にしてくれた彼女のために、彼女亡きあと、彼女が愛したその土地を買いそこを彼女の墓所としたのだ。さらに残りの金は手つかずの自然を保護するために購入したり、一方では信用できる団体に寄付したり、自らが発見した難病の研究資金のためにと寄付をしていたと語る。そして墓の中には彼女のなきがらのみが眠っているとも語ったのだった。
 しかし誘拐犯たちはその話を信じず墓を暴こうとする。止めようとしたBJは頭を殴られ気を失う。そんな時犯人たちにハブが襲いかかる。かまれて治療しようにもBJの治療用具は凶器だといわれ海の中に捨てられていたのだ。
 そのうちに駆け付けた警官たち〜BJに懇意にされ彼の信用が置ける人々〜がピノコたちを伴ってきた。手塚医師の応急処置によって犯人たちもことなきを得る。
 そしてお宝を得られず無念がりつつ連行される犯人たちに向かい、同じく救助されたBJは吐き捨てる。
「まだ疑うなら勝手にしろ、だが、この自然の有り難みがわからない奴に、生きている値打ちはない」と。