サムライスピリッツ零シリーズ

サムライスピリッツ零
サムライスピリッツ零SPECIAL
サムライスピリッツ天下一剣客伝

あらすじとキャラ説明(侍魂零)

03年秋、SNKブレイモアが悠紀エンタープライセス(現エクサム)の制作で発売したサムライスピリッツ零(以下侍魂零)。もともと01年に旧SNKが倒産し、その事業をプレイモアが受け継いだが、結局はKOFのリリースで手一杯で事実上他のシリーズには手をつけられない状態となった。そんな中でのサムスピファン満を持しての新作と期待をしたものだが。

そもそも侍魂零は、先の天草降臨をベースにシステムを再構成し、それに新たなストーリーを組んで制作された作品である。
 そこで本記事の命題として”侍魂零はネタゲーか?“というのを挙げたい。まあ多少の反発や非難を覚悟してのことだが。
 もっとも、この記事を読まれた方のほとんどは「それがどうした!」という答えに行き着くだろうけれど。それでもストーリーそのものは侍魂の物語にふさわしいと断言できる。

時は“零”が示す通り初代の約2年前、幕府転覆を企む我旺とそれに立ち向かう慶寅や覇王丸たちの闘いがベースなのだが、作品そのものがいわゆる“外伝”で、また先述の“天草”をそのままベースにしていることもあり、キャラによってはそのストーリーとの関わりが薄い場合、あるいは直設定と完全に矛盾している場合がある(まあそれがネタゲーと断ずる一つなのだけれども)。

まず、慶寅や覇王丸、幕臣の柳生十兵衛と服部半蔵、あと右京と幻十郎と、すんなりとストーリーにはまるのはまずこの面々だろう。

 また新キャラの面々では、
劉雲飛:今回の物語のキーワードの一つ“闇キ皇(くらきすめらぎ)”にかつて支配され、封印された古の武将ということでまあしっくりいってるかなと。
妖怪腐れ外道:それに引き換えこれはただ勢いのみで作られたいわばネタキャラというほかはない。それでも多少は性能はよかったのか一部にファンにウケ、その影響はカプコンファイティングジャムに影響を与えた、多分。

次は従来キャラと、旧シリーズからの定番システムである剣質システムの名残として作られたいわゆる“羅刹キャラ”からの派生キャラをからめて挙げたい。
ナコルル、リムルル:ナコルルに関しては羅刹キャラとして狼のシクルゥを使うバージョンに、今や幻のOVAとなりつつある“ナコルル〜あのひとのおくりもの”に登場した“レラ”が収まった。これは他の羅刹キャラと勝手は同じだと思い多少許容は出来るか。またリムルルに関しては時期考証上強引過ぎる面があり、ある意味ネタキャラ化してしまった感すらある。
萬三九六(幻十郎):武器にかけや(建設、解体用の大きな木槌)、背筋の鬼の面、そして性格のバカさ加減と、まさに勢いで創られたキャラだが第1の中ボスということでそこそこ手ごわかった(特に子分たちの援護攻撃)。
夢路(右京):右京の羅刹キャラにして第2の中ボス、常人とは違う体質に悩み出奔するという軽からぬ設定が一部共感を呼んだ。特に脅威なのは各デフォルトキャラの技を使用するという技の多様さを挙げたい(天下一剣客伝ではオミットされたが)。
羅刹丸(覇王丸)、炎邪(火月)、水邪(蒼月):これはずばり、アスラ斬魔伝から流用しただけで、まあそれなりにストーリーも組んではいるのだが、確かに初めのうちはやはり時期考証的に強引過ぎるかなと思ってはみたのだが、後の2人については後述の火月、蒼月の項にて。
ガルフォード、タムタム、シャルロット:これらも基本的に“天草降臨”から流用されたキャラクター(厳密に言えば先述に挙げた従来キャラ連中も)ということなのだが、ここまでは編者的には何とか作品内に収まっているかなとは思っているのだが。それはそうと、タムタムの替え玉だなんてやはり聞いてなかった、といったところ。
狂死郎、骸羅:基本的に前述と同じなのだがEDがネタ的展開となっているのはちょっととは思うのだが。
火月、蒼月:この二人に関しては、本来の登場は先述の事情から2年半後ということになるのだが、「いかに2人が“力”を得たか」というエピソードからして、やはりそれなりに考えているかなと。
閑丸:もともとは斬紅郎編の主人公的存在だった彼だが、ここでの設定が微妙に変えられているけどこの場合もしっくりいっているかなと。
破沙羅:これに関して、言ってしまえば時代交渉がデタラメで、やはり今までの物語を否定しているのがいただけない。

まあ、こんなわけで、すべてが取って付けたとは言わないまでも、やはり悠紀(エクサム)さんも多少は頭をひねったなと今となってはそう思わざるを得ない今日この頃。

真鏡名ミナについて、ここでの命題は「彼女は当作品のヒロインであるが、アイドルたりえたか?」というものであるが、まあ結論から言って「そんな、アイドルなんて(彼女談)」というのが答えなのだが。まあこれはかつてのナコルルにも言えること。まあそれと対極に真のチャムチャム、ポリサム以降のリムルルは最初から狙った感があったかなと思うけれど。
それはさておき、確かにミナの造形はある程度狙った感もある、ビキニ型の着物にスカート、そしてオプションのペットといった具合。
それに戦闘スタイルといえば弓使いというだけあって主に遠距離戦を専らとし、それでいて懐に潜り込まれればやはり弱くなるといった具合。まあこういうタイプはストUのダルシムの動きを参考にしてくれたらなと思ったのだが。
しかしまあ結局は彼女も後の『天下一剣客伝』のいろは同様に、侍魂キャラである以上に『アルカナハート』に連なるエクサムキャラの基礎だなといった感も強い。
ところでストーリーといえば、確かに我旺の乱に呼応して集ったものの、その前の彼女の村を襲ったあやかしの謎を突き止めるのが主な目的だった。しかし直接的には我旺は関係はないようで(彼の力の源の闇キ皇(くらきすめらぎ)の影響もあるようだけれど)、結局あやかしの元だった魔獣化したおとものチャンプルと対峙しておしまいという何とも救われがたい結末になってしまった。
まあでも次の剣客伝にてはその魔を退けて、彼女の父親の手掛かりと自分の名の由来を知り、いつかは本当に笑える自分をといった少し救いがあったストーリだった。
まあそれらを考慮して、編者自身もこういったストーリーを組んだこともあり、現在進行中の企画も結構考えてもあります。

確かに、ミナやいろはのようないわゆる萌え系のキャラはある意味悠紀さんの持ち味だろう。その延長線上にオリジナルである次作のアルカナハートにつながったのかなとも伺える。
ともかくミナもまたSNKキャラとしてまだまだいけるとも思っておりますが、要はプレイモアさん次第でしょう、ねえ。

最後にこの二人を簡単に述べる。
ラストボスの兇國日輪守我旺。十字槍を手に幕府に反旗を翻す江戸時代の戦国武将といった感のキャラで、まあ風格だけはラストボスにふさわしいのだけれど、使う技そのものはデフォルトキャラのレベルとそうそう変わらない感がする。あと1本取って鬼神の鎧(仮称)に身を包むとただ無敵なだけで、逃げ回るだけで時間切れを待てばいいというのが少し残念なところでもあるが。
慶寅については、零の主人公だけあって、むやみにカッコいい造形と無駄にイキのいいキャラが立ったような立たないような、それにやることなずことすべて派手。まああと必殺技並みに派手で威力のある通常技(特殊技)2つも印象に残ったなあ。

対戦ツールと堕した零スペと開き直りで成功した剣サム

さて、その侍魂零がまあそこそこにヒットして気を良くしたのか、次作のサムライスピリッツ零スペシャルを発表したのだが、これは結構穴だらけの作品だった。
 まずスペシャルと銘打ったものの、前作ラストボスの我旺が使用可能になったのをはじめ、歴代のボスキャラが追加しただけで、中ボスの三九六と夢路がいなくなったり、天サムにての演出だった絶命奥義がむやみに残酷な表現だったり、しかもそれがボス戦において必要事項だったりと、結局中途半端な作りとなりプレイモアさんとしても失敗作と見なしてしまった。

続く天下一剣客伝。これは先の零スペの失敗を受けてか、もう何でもアリの展開となってまさにお祭り企画にふさわしい出来となっている。
 まずキャラクターについてまあ主人公格のアンドリュー、ヒロイン格のいろははともかくどうでもいい系の双六、なんで乱入キャラになったのかが、お祭りというキーワード以外いまいちよくわからない。
 そしておちゃ麻呂、ただのカラクリ人形で結局は腐れ外道に近いキャラクターでだった。まあこれもエクサムさんらしいということになるが。でもこれが後のキャサリン(アルカナ)に連なっていくと思えば。
 それから従来キャラについては、零キャラ全員そろい踏み、そして歴代キャラ総登場というのはやはり文句はないが、やはり色(しき)がいないのが悔やまれるところ。彼女も2Dスプライト系にアレンジされたのだから。
 それに骸羅、なんでハゲになったのか、というならまだいいが、毛ありキャラとしてキム・ウンジェってなんなのだろう。
 それに関連してかどうかわ分からないけれど、やはりキャラ声優の総入れ換えの件をとり上げたい。確かに零のキャラボイスは一部を除いて天草からの使い回しなのでやむをえないとは思うが、それでも新しくアフレコをするにしても前作からの引き継ぎがいないのはいかがなものか。キャラはともかく受け持った声優さんにも愛着もあるだろうし。
 ことにリムルル役の生天目仁美嬢については後にロリ属性が希薄だったのがきいたのだろうが。まあそれでもコンシューマーにては元の声優さんに戻ったことだし。

もう一つ取り上げたいのはスピリッツシステム。“剣”“怒”“斬”“天”“零”“真”の6タイプの剣質からそれぞれの闘い方を楽しめることだろうけど、ここで一つ意見をば。
“真”スピリッツにおける武器破壊技について、もともとは真侍魂においての超必殺技的な位置づけだったのだが、これは一度決めたら(決められたら)勝負が決まるほどの威力だったので斬紅郎以降で武器飛ばし技に威力を抑えたといういきさつがある。
 まあそのことがバランスを崩す要素となっているのは指摘したいところか。とはいえラストボスの“魔界を統べし我旺”の場合は決められても多少はあきらめはつくのだけれど。

ともかくこの作品は、確かに侍魂シリーズの集大成としてやはり申し分なく一応のしめくくりにもふさわしいことだろう。
 しかしながら、捨てる神あらば拾う神ありと言うべきか、零のシリーズがひとまずシメとなったところ、今度はサムライスピリッツ閃で再登場と相成ったが、結局ゲーム展開の地味さと、私見ながら伝奇色が抑えられたことから、作品的に失敗作とみなされてしまったのだが。
 何度も言うようだけどここはやはり編者が考察したように閃の追加キャラ版やら天下一剣客伝・弐(仮称)やらを製作してくれたらと思っているのだが。